web業界からAI業界へ。約1000名の機械学習コミュニティを主催する門前さんを突き動かす原動力とは?

自社開発のAIで様々な領域にサービスを展開しているFRONTEOに在籍し、プライベートでもAIのコミュニティ『MachineLearning15minutes!』を主催する門前さん。web業界から、どのようにしてAI業界へ移っていったのか?そしてどんな思いをもってAIと向き合い仕事をされているのか?人工知能オタクを自称する門前さんの本音に迫ります。 

門前 一馬

株式会社FRONTEO 行動情報科学研究所
門前 一馬

Machine Learning 15minutes! 主催
全脳アーキテクチャ・若手の会 クリエイティブディレクター
全脳アーキテクチャ・イニシアティブ 正会員

web業界からAI業界への転身と挫折

これまでどのようなキャリアを歩んでこられたのか教えてください

インターネット業界に入ったのが、1997年で、キャリアのスタートはwebデザイナーです。その後アートディレクターになり、アートディレクターからディレクターになり、ディレクター経験後、オンサイトで事業所の責任者を6~7年経験しました。
そこから事業開発、営業戦略に携わりました。

AIに関連する仕事に就いたのはその後で、はじめはAIを開発しているスタートアップに入りました。
ただ、そこではなかなかうまくいかず半年ほどで退職し、元々やっていた業種での仕事に戻ったのですが、AIへの興味は薄れることはなく、ずっとAIの勉強を続けていたんです。その趣味が高じて、現在の職場に移ってきたという流れです。

AIに人生をかけたいと思ったが、以前は厳しい状況だった

門前 一馬さんのインタビュー

いつからAIに興味がわいたのでしょう?

2005年くらいです。
ただ、その当時はAIに興味があったものの、AIに関連する業務で生活できるとは想像できませんでした。
具体的にアクションをおこしたのは、2014年頃、大手ITアウトソーシング企業の次に転職したAIのスタートアップです。

きっかけは、MITが出版している「機械との競争」という書籍の中で、人間の仕事が機械に置き換わるといった文章を見たことです。
例えば、大手ITアウトソーシング企業の主力業務であるコールセンターでは、アウトバウンドは難しくてもインバウンドは、どんどん機械に置き換わっていきます。
そういう状況を想像した時、未来がないと感じてしまったのです。

もちろん当時に勤めていた会社は1万人以上社員がいる会社でしたので、すぐに経営が厳しくなることはないし、機械化の流れにおいても規模を維持しながら成長していくとは思ったのですが、自分が活躍したい場所は、機械や自動化を利用してイノベーションを起こすところだと考えていました。
そして、次の人生をかける仕事は、やはりAI関連しかないと信じ転職をしました。

ただし、2~3年前の状況は、今と違ってAIの営業をかけてもなかなか具体的な話にまでいたりませんでした。
今は景気も良く、オリンピックに向けてAIバブルに近い状況になっていますが、当時は状況がまったく違いとても苦労した経験があります。

全脳アーキテクチャ若手の会を通じFRONTEOの武田氏と運命の出会い

FRONTEOに入社されたきっかけは?

『全脳アーキテクチャ若手の会』というAIコミュニティがあり、そこで私がクリエイティブディレクターとしてボランティア活動をやったことがはじまりです。
『全脳アーキテクチャ若手の会』とのかかわりは、たまたま若手の会の新年会に参加し、元代表の大澤さんと知り合い、いろいろとお話をさせていただく中で、社会人で応援してくれる方を探しているという相談があったからです。
社会人支部のメンバーとして勉強会に参加し、天才達に囲まれながらWEBサイトの更新やプロモーションビデオの制作などをやっていく中で、AIや機械学習の知識を得る事ができました。

趣味でAIの勉強をしていく中で、サムライベンチャーサミットで、FRONTEO(当時UBIC)のCTOで行動情報科学研究所所長の武田さんと知り合い、武田さんを『全脳アーキテクチャ若手の会』に勧誘しました。笑
それから、全脳アーキテクチャの会のメンバーからスポンサーになってくれる企業を探してほしいと言われFRONTEOにスポンサーになってもらいました。

その後、業務としてAIに携わりたい一心で、自分ができることとやりたいことの理想で悩み、継続的に交流していた武田さんに相談してみたところ、個人的に取り組んでいる活動や自分がこれまで勉強してきたこと、今まで積み重ねたものがFRONTEOでは活かせそうだと感じ入社を決めました。

世の中を変えるAIのビジネスモデルを理解しようとコミュニティを作った

門前 一馬さんのインタビュー

個人で機械学習のコミュニティを運営されていますが、きっかけは?

AIを活用したビジネスモデルに興味があったからです。例えばコールセンターだったらAIによって、ビジネスのやり方がまったく変わってしまいますよね?
そういったビジネスモデルのイノベーションを理解したいと考え『MachineLearning15minutes!』をはじめました。

当時AIは『全脳アーキテクチャ若手の会』で勉強していたのですが、若手の会は汎用AIや学術的な内容のコミュニティだったので、現実のビジネスと乖離があると感じていました。
現在、世に出ているAIと言われているものは、安定した技術をうまくビジネスに活用しているものなので、『MachineLearning15minutes!』ではAIをきちんとビジネスに活用されている方たちといろいろな情報交換がしたいという思いで運営をしています。

最初は20~30名の小さな勉強会にしようと考えていましたが、すぐに100人近く集まるイベントになり、大学教授や企業のエースエンジニアが登壇してくださるイベントに成長しました。
転機はAINOWの亀田さんがイベントに携わるようになり、Googleの佐藤さんに登壇していただいた事だと思います。

AIオタクで、最先端の技術を話すのが楽しい、だから人を呼べる

門前 一馬さんのインタビュー

なぜ著名な人たちを呼べるのでしょう?

単純に、自分はAIオタクなんです。
オタクなので、最先端のAI技術に興味があり、技術の話をする事が楽しいのです。
なので、天才達と先端的な技術の話をしたいというほかに下心はありません。笑
お金をとっているのも飲食代のみで、純粋に気兼ねなくAIについて意見交換できるコミュニティを作りたいという思いでやっています。

今後、日本は少子高齢化で人口が減っていきますが、AIをうまく活用すれば今よりも少ない時間で同じ水準の給与を確保できるかもしれません。
そんな社会を良くするようなAIの明るい未来について語りあいたいと考えています。
だから、すごい人たちが心良く登壇を引き受けてくれていると勝手に思っています。笑

コミュニティ運営のコツみたいなものはあるんでしょうか?

コミュニティ運営のコツは、最先端の論文や実装事例を勉強することだと思います。
また、Googleやamazon、DeepMindなど、先端企業の情報はできる限り収集するようにしています。
純粋に興味をもって、楽しく勉強することが一番だと思います。
情報収集の方法は、自分が尊敬する方のTwitterやFacebookをフォローしたり、GoogleアラートでAIの記事について確認しています。
あとは、イベントやメッセンジャーで雑談をすることだと思います。

今どんなことをされていますか?

技術広報におけるクリエイティブ業務全般と採用です。
一例をあげると、WANTEDLYの運用をはじめ、写真撮影や記事の作成、動画の編集などを担当しています。

FRONTEOを世界へ、機械学習コミュニティは米中に負けないよう作り上げた

これからどこを目指されていこうと考えていますか?

FRONTEOで開発しているAI、KIBIT(キビット)の認知を高めるため、微力ながら今まで培ってきたクリエイティブの能力やAIの知見、営業戦略など、自分が経験してきたことを総動員して貢献したいと考えています。

プライベートとしては、『MachineLearning15minutes!』や『全脳アーキテクチャ若手の会』を通じて、日本でのAIや機械学習のコミュニティを盛り上げて、日本がアメリカや中国に負けないAI立国になっていく手助けをしたいと考えています。

ちなみに、これから市場で求められる人材像とはどんな人とお考えですか?

GoogleはAIの民主化を唱え、機械学習の技術をコモディティ化させることで、アルゴリズムを知らなくてもAIを実装できるようにしようとしています。
その流れは、googleだけでなく、microsoftやAmazonもしかりです。
ネットで公開されているライブラリを実装できれば、誰でも機械学習のサービスが作れてしまう時代になっているので、web業界からAI業界にシフトしようとされているエンジニアの方は、まずpythonを勉強してtensolflowやchainerのライブラリを実装していくと良いと思います。

特化型AIの進展と汎用AIの登場で未来は明るい!?

AIによって訪れる未来はどのようになっていくと思いますか?

大きく2つあります。
まず、特化型AIといわれるものに関しては、実用化が圧倒的な速度で進んでいくと思います。
たとえばamazonは、現在ホワイトカラーが行っているマーケティング業務なども機械で自動化し、倉庫もロボットで自動化させ、運送も自動運転で自動化させるなど、どんどん人の仕事を機械に置き換えています。

そうなると、人間は機械にはできない違う仕事をしなければならなくなります。
なので、AIが発達したら今の仕事そのものが大きく変わっていき、違う仕事が生み出されていくと思います。

2つめは、汎用AIです。
イーロンマスクが危険だと警鐘を鳴らしているテクノロジーです。
確かに、自分もアルゴリズムが自己を認識して増殖し、それを人間がコントロールできなくなったら怖いなと感じます。

汎用AI界隈の先生がたが仰るには、汎用AIの実現には、まず認知アーキテクチャが実装され、機械が自己を認識すると大きなステップアップになるそうです。
もし汎用型のAI、ドラえもんのようなものが完成したら、そもそもアルゴリズム自体に人権のようなものが必要になるかもしれないし、現在の倫理観も変わると思います。

現在、弊社で販売しているコミュニケーションロボットのkibiroも、自己を認識して自分で意識をもったら、どうなるんだろうなと想像する事もあります。
そこまで実現するのは相当先の未来だと思いますが、そういう世界がいずれくるだろうなと思っています。

ただ、まず備えなくてはいけないのは、AI化で仕事の概念が変わっていくので、それに対して人が適応する事だと思います。
AIをうまく活用して、日本を明るい未来にしなければいけないですね。