データサイエンティストとしてキャリアスタートした村上さんのキャリア観とは?

ALBERTに入社し、データサイエンティストとしてキャリアをスタートさせたデータラーニングCAO村上さんは、なぜその道を選び、どこを目指すのか?たっぷりと聞いてきましたので、ご紹介します。

データサイエンティス村上さんインタビュー

村上 智之

ALBERTに入社し、データサイエンティストとしてキャリアをスタート。
その後、株式会社イノーバへ転職し組織の立ち上げや、web開発、プロジェクトマネジメントなど一通り経験し、現在はデータ分析の請負と教育事業を行っている株式会社データラーニングでCAO(Chief Analytics Officer)として活躍。

新卒入社した会社を4ヵ月で退職しデータサイエンティストとしてのキャリアをスタート

データサイエンティス村上さんインタビュー

これまでのご経歴を教えていただけますか?

まず、新卒で入った会社は、かなりの激務で体調を崩したというのと、価値観が合わなかったという所から、4か月で辞めてしまいました。そんな状況の中、サマーインターンで働かせて頂いたALBERTの方から、「うちで働いてみないか?」と声をかけて頂いたのが、データ分析キャリアをスタートしたきっかけでした。

ALBERTでは、データ分析部という当時4~5名くらいの部署で、データサイエンティストのサポートのようなことをしていました。具体的にはデータ周りの整理などです。元々情報系の大学出身というのもあり、プログラムは書けたので、SQLを書いたり、一部機械学習を用いた分析等も指示をもらいながらやったりしていました。

例えば、「時系列分析をやってみて欲しい」とお題を与えられた上でデータの加工、モデリングを行ってみる、「ECサイトの顧客分析をしてほしいから、この顧客の定義で分析レポーティンをして欲しい」といった依頼を受けた上でレポートを作成するといった、ある程度型が作られた状態で実際に手を動かすようなことをしていました。出来が悪ければしっかりフィードバックもしてくれる環境もありましたし、そういった経験を経る中で、データ分析に関する型が身に付いて行った感じがあります。

ALBERTでは、最新の研究を社会実装していくアカデミックに強みを持った方、機械学習の知見を持ちつつシステムに落とし込むエンジニアリングに強みを持った方、クライアントのニーズを的確に掴んで価値を提供していくコンサルティングに強みを持った方など、色々な方に接する機会を頂いたので、データ分析のキャリアとしてどういった方向性に進んでいくかを考えさせられました。

その中で、自分が元々エンジニア志望でありながら分析官として働いていたことも影響するかもしれないのですが、分析官とエンジニアの間に若干距離があるように感じました。そこで、「データ分析と開発の両方の知見を持ちつつ、コミュニケーションを円滑にして行くような人員」にニーズがありそうだという考えに至りました。そこで、データサイエンティストの次に、一度webエンジニアをやろうと決心しました。同時に、スタートアップも経験したいと考えていたので、10名くらいの規模の時にイノーバという会社に転職しました。

イノーバではどんなことをされていたのですか?

イノーバ時代には、組織の立ち上げや、web開発、プロジェクトマネジメントなど一通り経験させて頂きました。データ収集・分析の基板を構築したり、コンテンツマーケティングを中心としたマーケティング全般の業務を経験させて頂いたりといった経験に関しては、データ分析の業務を中心として行っている現在も非常に活きることが多いと感じています。

その後どういった経緯でデータラーニングの設立に至ったのでしょうか?

イノーバの次は、澪標アナリティクスという会社に転職しました。澪標アナリティクスでは、クライアント先に常駐して自社の方との繋ぎ役のようなことをしていました。

機械学習のプロジェクトでは、データが散在していて集まらず、プロジェクトが進まないことがよくあります。そういった問題を解決するために、クライアント社内にあるデータをとりまとめたり、データ活用プロジェクトとしての問題設計をしたりするように調整する人員が必要となるのですが、そういった役割を担当していました。

具体的な分析領域の実務としては、ダッシュボードの設計やデータ連携など、分析チームづくりの初期フェーズに必要な領域に関してサポートをしていました。ガリガリ分析したり、ロジックを作ったりするというよりは、分析しやすい環境づくりをしたり、分析専業の会社がきちんとプロジェクトして受けられる状態を作って提供したりするといった業務が中心でした。

その後は半年間程度のフリーランス期間を経て、データラーニング社の立ち上げに至ります。

大学では統計の学部だったのでしょうか?

大学は理工学部なので情報系の学部で、授業でもプログラミングや多変量解析などをやっていました。ただ、大学からでなく、高校から情報科に通っていたので、ITの道に進むことは、高校の時点で決めていました。

なぜITに興味をもったかというと、新しいことが好きということと、叔父がITで企業していて面白そうだったという割とシンプルな理由です。自分が中学生くらいの時はITバブルだったとので、「プログラムくらいは書けないといけないよなー」って感じで考えていました。

データ分析官が育って行くエコシステムを作りたい思いがある

今はどんなことをやられているのですか?

データラーニングという会社で、CAO(Chief Analytics Officer)をやっています。メインの事業としては、データ分析の請負と教育事業ですね。データサイエンティストとしてのキャリアをつみたいという方にスキルを教えて、身につた方に仕事を紹介していくという感じでやっています。教育事業を始めたきっかけとしては、自分の体験によるところが大きいですね。

自分は、新卒4ヶ月で会社を辞めたタイミングに、たまたまALBERTから声をかけて頂きました。だから、今のデータサイエンティストとしての道が開けたと思っています。でも、データサイエンティストの道に進みたいけれど、きっかけがないという方は、たくさんいると思います。だから、地頭がよく、素養もあって、モチベーションも高いけど、運に恵まれずにビジネスキャリアを積んで行くきっかけがない。といった人に対して何かきっかけがあたえられたらという思いではじめました。

もう一つの理由としては、自分のようなキャリアの方が非常に少ないと感じた所があります。他のインタビュー記事で紹介されてらっしゃる方たちのような、統計やエンジニアリングの知識と経験があって、かつビジネスと橋渡しができる人材が不足しているので、そういったキャリアを積むための道筋を作る必要があるという課題感を非常に強く感じています。

また、データ分析の専業だけでなく、しっかりとデータ分析を実務に適用できる方が増えてくれれば良いと考えています。今世の中にあるデータ分析の課題って、8割くらいは集計・可視化で解決して、残りの2割のうち8割も、古典的な機械学習で解決するんですよね。だから、流行りだからといって、AI・機械学習を無理やり使うのではなく、適材的期初に合わせて使うように選んでいけるようなリテラシーを身に付けられるようにして行きたいですね。

教育事業は具体的にどのような感じでやられているのでしょうか?

ステップとしては3段階に分けており、はじめにアナリスト領域をしっかりと身に付けて頂くように、SQL、Tableau、excelを使って集計と可視化、レポーティングを出来る所を目標にしています。

それをやっているとデータに対する感度や知見が高まるので、その後に機械学習を勉強するようにしています。そして分析、機械学習を理解した上で、データを使ってどうビジネスに落とし込んでいくかといったコンサルティングの学習に移ります。

今後はどこを目指していきますか?

今後は、データ分析官が育って行くエコシステムを作りたいと思っています。

先ほどお話したような体系立てたカリキュラムが一通りできて、育った方が教師となるようなサイクルが回せたら理想だと思っています。そういったサイクルが回ることで分析人材がどんどん育っていき、世の中でデータ分析ができることが当たり前になると良いなと思っています。

これからはデータ分析自動化の流れが進み、自動で分析されるような流れになっていくのは間違いないです。そうなった際に、データ分析人材の取りうる選択肢としては、「そのシステムをいかにうまく活用するか?」という領域が主流になるはずです。アルゴリズム開発などの複雑な業務に関しては、AmazonやGoogleといった大企業や、DataRobotを始めとしたAIベンチャーなどに集中されていくような流れになると考えています。

そういった流れの中で重要になって来るのがビジネスと分析をつなげる人なので、その領域のスキルを持った人を増やし、価値のある分析が生まれていくという所が目標ですね。

スペシャリストよりもゼネラリストの方が需要がある

データサイエンティスト村上さんインタビュー

市場で求められる人材像とはどんな人だと思いますか?

圧倒的なスペシャリストか、全領域をバランスよく理解できる人材だと思います。全領域までいかなくとも複数領域またいで話ができる方は市場で求められると思います。

そしておそらく、スペシャリストのほうが何千万や億単位のお金がもらえると思う一方、その技術が廃れたら結構悲惨な結果になると考えています。そういう意味では、スペシャリストはハイリスクハイリターンな気がしています。一方で、複数領域またいでできる方は状況に変化があっても、需要があり続けると思っています。

ビジネス課題が何かを把握して、データを使ってどう解決できるかを定義して、それを機械学習に置き換えられるようなスキルセットは、まだしばらくは自動化されないだろうと考えています。

分析のためのビジネスセンスを身に付けるには、どうすればいいのでしょうか?

これらを学ぼうとすると、冒頭私が麻雀の話をしたように、どうやったら儲かるかの感覚値みたいなものをみにつけておくのは良いかなと。感性を磨くのはポーカーとかおすすめです。

結局、データ分析の本質って意思決定なので、「この分析プロジェクトを進めることが損なのか?得なのか?」という問いかけが一番重要なんですよね。例えば、「この分析のプロジェクトを進めることで、XXのコストが〇%改善する。その結果、利益が△%上がりそう。分析のコストは□円なので、分析する価値がありそう。」といった感じです。

そういった数字の感覚はゲームの中でも訓練できますし、小さなビジネスを実際にやってみることでも研ぎ澄まされると思います。例えば、メルカリに商品を出品してみて、どうやったら売上が上がるのか、買われやすいのかということを、仮説を持って繰り返し検証してみたりすると感覚が研ぎ覚まされそうですよね。

また、遠回りかもしれませんが、スタートアップなどでサービスを作る場に実際に行ってみるというのも一つの手かもしれませんね。実際に一からサービスを作るという経験は分析にも間違いなく役に立ちますし。逆にずっとエンジニアの経験しかない方ですと、そこの経験から得られるものはビジネスとは少し遠く難しいのではないかと思っています。

流れが速いAI・データ分析領域でどうやって新しい情報を収集していますか?

Twitterの情報は参考にしているかもしれません。データ分析系の方たちのフォローもしていますので、そこからの情報は注意してみています。それ以外はデータ分析に関するニュースを見たりもしています。

あとは、オープンに公開できない、されていない情報なども多いので、分析業界の人と直接会って情報を仕入れています。勉強会や交流会などに参加することで、最近はどんな領域が流行っていて、どのように使っているのかなどの話を聞く事ができます。苦労しているポイントなど、現場の生の声が聞けるので、実務に応用しやすい情報が手に入りますね。

こういう領域を勉強する上で、何を捨てるかの割り切りは大事かもしれませんね。私の場合は学部卒で、博士とかと専門領域で戦っても太刀打ちできないので、アカデミックな領域からは若干距離を取るようにしています。例えばですが、パッケージのロジックなどは読み解いて活用できるようにしますが、オープンソースのパッケージの中身を書き換えてコミットするといった活動はしていません。

エンジニアリングに関しても、「技術の概要とメリットとデメリットを理解してプロトタイプの実装ができる」というレベルで理解すると決めているので、効率良く情報収集ができます。プロトタイプまで作れれば、その領域のスペシャリストに頼んでしまえる状況になるので、あくまで橋渡し的な役割に徹しています。

付加価値を高めるために 視点をもつ

今後AI・データ分析領域で付加価値を高めるために必要なことは何だと思いますか?

将来に向けてこれだと感じたものにあたりをつけて、そこに賭けるということが必要だと思います。とはいえ、何かに賭けるということは外れることもありえますから、5つくらいその領域を見出しておけばよいのではないかと思います。

今ですと、ブロックチェーンやVR、自動運転が発展した先のことなどを想像して、そこに関連する技術を身に付けていくのが良いと思います。また、データ分析領域では、DataRobot等の登場で分析自動化の流れがきていて、そういった領域が浸透してきたら、自動化ツールの導入コストが下がって中小企業も導入して行けるようになると思います。そういった流れの中で、伸びて行きそうなスキルに投資することが大事ですね。

繰り返しになりますが、自分が今廃れないと思っているスキルセットとしては、ビジネスとエンジニアリング、データサイエンスの3つ領域に関して実務レベルの能力があり、その領域を橋渡しすることができるスキルです。そう考えているので、そこができる人を育てていくことに賭けています。

その中での要素技術で言うと、SQLやデータマートの設計や連携、データマネジメントといった所ですかね。エンジニアリング領域に関しても、コードを綺麗に書く技術、コードを管理する技術、コンピュータサイエンスといった領域に関しては、廃れるようなことはないと思います。

そういった所を加味すると、PMBOKなどのプロジェクトマネジメント系の汎用性が高いスキルを磨きつつ、機械学習の特定領域の知識を身に付けていくという戦略は有効だと思います。

私個人でいうと、機械学習の論文を見て実装するといった領域ではなく、パッケージをいかにうまく使いこなせるか、いかに組み合わせるかという所に焦点をあてて、ビジネス課題の抽出と解決を中心に取り込もうとしています。

人工知能の未来は今後どうなっていくと思いますか?

単純作業が一日でも早くAIに代替されるようになって欲しいですね(笑)よく言われている話ですが、AIに仕事を任せて、ベーシックインカムを貰いながら生活できるのが理想ですかね。

日本は少子高齢化で人口自体が少なくなっていくので、機械にできるものは早いうちに機械が代替していければいいなと。AIは今後もますます発展していくと思いますが、一層進んでいくカギになるのは、事業会社側にデータ分析の技術を理解した人がいることだと思います。その解決策の一つが、データ分析の人材を育てて送り込むことです。データ分析のことがわかる人が正社員で大企業に入って価値を出すことで、データ活用がより進んでいくのはと考えています。

現在は、メガベンチャーを中心とした、先端的な企業に偏って分析人材が集まっている状況がありますが、古くからある大企業でも、まだまだデータ活用の可能性が眠っています。そういった、データ活用、AI導入に手がつけられていないような会社が本気でAI導入に乗り出すようになると、一気に世の中が加速すると思っています。